「エリザベス女王の訃報から冬の節約生活まで、あれこれ書いてみました」
イタリアは25日の総選挙でドラギ首相の後任が決まるので選挙戦が日々ヒートアップしていましたが、イギリスのエリザベス女王逝去の一報を受けて途端にエリザベス女王追悼記事やイギリス王室の今後についてまるで自国の事のように心配しています。イタリアには王様がいないから他国の王様に興味があるのでは?と穿った見方をする読者も多いでしょう、実はイタリアの王様というかその子孫は第2次大戦で国外追放されて現在はスイス在住なのです。大戦中連合国軍がイタリア半島を北上しローマまで進軍したとき、ドイツ軍に捕まらないように南部ブリンディシまで逃げてしまいました。政治的な理由はともかく“王様が逃げた”と言う事実に国民の気持ちは離れたのでしょう。戦後イタリアは国民投票で共和国になり、王&家族が国外追放になったのも仕方ないと思うわけです。
さて、そんなこんなですが選挙は25日実施されます。争点は幾つかあります。もちろんエネルギー政策が一番重要ですが、興味深いのはアメリカで最高裁が女性の中絶権を違憲と判断したことでイタリアでも巻き起こった中絶権問題です。イタリアで中絶が合法化したのは1978年(第194条)と比較的最近で、それまで女性は非合法の堕胎手術を受けるか外国に行かなければなりませんでした。今でも中絶手術を良心的拒否する医師や病院は多く、中絶手術可能で自宅から遠く離れた場所に行くことを半ば強制されることが往々にしてあります。いわゆる無言の圧力があるのです。イタリア人は大部分がカトリックです、ただし信仰実践者(神を信じ、戒律を守って教会に通う人)は日本人が想像するほど多くありません。なぜならイタリア人は誰でも赤ちゃんの時に洗礼を受けます、これはカトリックのコミュニティに入る権利を得たという意味です。でも成長すればそれぞれ違った生き方をするもの、ですから洗礼や宗教教育は受けたけど信仰を実践しない(神を信じない、戒律に興味ない)人たちは現代社会において次第に多くなっているのが現状です。そうはいっても、カトリックの考えはイタリア人の根底にあるので、こうしてキリスト教系他国の中絶問題はイタリアにもさざ波のように影響を及ぼすのです。新しい政権は中絶問題にどう対応するのか、選挙の争点としては小さいですがちょっと興味ありますね。
刻一刻と変化する欧州のエネルギー問題対応策とロシアの恫喝。政府の方向性は新政権発足後すぐ発表があるでしょう。では実生活ではすればいいのか?他のEU諸国同様イタリアも今年の冬をどう乗り切るか(国民にどう乗り切らせるか)、今週議会でほぼ枠組みが決まりました。一言でいえば“国民一丸の大我慢大会”ですね、担当省庁曰く「国民の負担にならないように専門家グループと協力して知恵を絞った」(fanpage)そうですが… 具体的には
- ・ 公共の場か自宅問わず室温を20度から19度に下げる。イタリアでは法律で室温は20度と決まっているが、さらに1度下げる。場合によってはさらにもう1度下がることも!こうすれば秋になって暖房使用開始まで15日間稼ぐことができる。
- ・ シャワー使用時間も標準7分間を5分間に短縮し、さらにお湯の設定温度を48度から45度に下げる。
- ・ 洗濯機の使用回数を毎日から2日に1回に減らす。
- ・ 古い冷蔵庫から新しい冷蔵庫へ買い替え。古い冷蔵庫は電気食いなので新しい冷蔵庫にすると最大67%の節約になる。
こうして細かく気を付けていけば世帯当たり250€(約3万6千円)の節約にもなるということですね。しかも某病院の医長によると室温を下げると体内の消費カロリーが上がってダイエットになるからむしろ良いことなのですって。私がこの話をすると必ずされる質問は「国民は本当に守るのですか?」ですが、経済的にやらざるを得ない人は多いと思います。また政府が厳しく管理する姿勢ですので、違反者には高額な罰金を科すと言われていますし(具体的な金額はまだだけど…)。コロナ下の厳格な規制を彷彿とさせますね。
国民に我慢を強いるなか、25日に決まる新政府はどう舵取りするのでしょうか?
ではまた。