「2022年サンレモ音楽祭と男女平等」

2022年サンレモ音楽祭に参加する歌手の名前がメディアで取り沙汰される時期になりました。昨年同様、司会兼芸術総監督はアマデウスが務めます。3年連続で同じ人が司会兼芸術総監督を務めるのは珍しいことですが、来年も新型コロナの影響を完全に払拭できるかどうかは分からない状況なので、厳戒態勢で挑んだ前回のサンレモ音楽祭を指揮したアマデウスが続投することは理に適っていると思います。
さて、そのアマデウスが先月末このような事をメディアに言いました:「女特別枠はないよ」。どういうことかというと、Fimi(Federazione dell’Industria musicale italianaイタリア音楽産業協会)のエンゾ・マッツァ会長が「(若手部門の)参加歌手の半数を女にしたらどうか」という提案をしたからなのですね。確かに近年は女が少ない、しかも賞をとるのは圧倒的に男性という現実はあります。上記のアマデウスの言葉はそれに対する回答でした。かれは続けて「会長の提案に敬意は表するけれど同意はしない。歌手の性別を基準にして選曲したことは一度もない。もしそんなことをしたら、それは大きな間違いだと思う。僕は曲の美しさを基準に選ぶ。女性枠なんてものを作ったら、それこそ女に対する侮辱じゃないか。音楽は芸術だ。芸術という分野に特別枠を作ることはできない。男女平等というのは、歌手から提示される曲(訳注:ここでは曲の一部のこと。全体は音楽祭直前まで秘密)の数で決まる。仮に若い歌手800人のなかに女が200~300人しかいないからと言って、それは僕のせいではないよ。そしてこの中で常時300人が良い曲や光る曲を持っている。サンレモでキャスティングされるのは良い曲や光る曲を持っているからだ。いずれにせよ、どんな音楽祭にも男をキリキリ舞いさせる女がいるものだ。これこそが重要だ。最初から特別扱いで出てきた女などお呼びじゃないよ。」
 では来年の参加歌手を見てみましょう。若い歌手を積極的にキャスティングしていますが、ベテランや中堅もいます。大御所ではマッシモ・ラニエリやジョルジョ・モランディが参加します。どんな曲が披露されるのか楽しみですね。また昨年から続いて参加する歌手はレ・ヴィブラツィオーニ(フロントマンのフランチェスコ・サルチーナが前回ソロで出場)、ノエミ、アキッレ・ラウロ、イラマなど。2019年に優勝したマムードはブランコと組んで再登場します。個人的には力強い歌声が魅力のジューシー・フェッレーリ、甘い歌声が魅力のスペインの歌姫アナ・メナ、若い世代では若干20歳のラッパーでシンガーソングライターのアカセヴンが楽しみですね。
 2021年の正真正銘のスーパースター、マネスキンは賞レースには出場しないようですが、何らかの形での出演が打診されているとか。マネスキンは衣装も豪華なので(2021年のサンレモ音楽祭の衣装はエトロが担当)ヴィジュアル的にも大いに期待できます。
 前回は新型コロナ禍による厳戒態勢下、無観客で開催されたと同時にアマデウスがかなり思い切った改革を断行したということですが、2022年はアリストン劇場に観客を入れて例年通り華やか&現代的な音楽祭が楽しめますように。